I-TRIZの各種手法と他の類似手法との比較一覧

2015.07.27
代表的な問題開発手法を誕生した時系列順に列挙しました。(* I-TRIZの手法については背景色をラベンダー色としています。)
手法名適用分野等開発者
運用機関
手法の概要手法の手順I-TRIZとの比較
行動分析学 人間の行動に関係する問題を解決する 1930年代
B・F・スキナー
一般社団法人日本行動分析学会
人間や人間以外の動物の行動の原因を解明し、行動に関する法則を見出し、その知見をもとに、現実の行動をより良い方向に改善する。
行動とそれに伴う状況の変化との関係(行動随伴性)を1単位として行動を観察する。行動の原因を考えるときは、行動の直前から直後にかけて起きる状況の変化に着目する。
人間の行動は、行動の直後に出現した変化(好子)が起こると強化される。行動を実行する際、行動に先行する刺激や条件が行動に影響を与える。
行動には、
(1)「目に埃が入る」→「涙を流す」のように、原因となる外界の刺激が現れ、次にそれに対応する行動が起きるものを、レスポンデント行動(反応行動)と、
(2)「電機のスイッチを押す」→「明るくなる」のように、行動の後に発生したことが行動の原因になっているものを、オペラント行動(操作行動)との、2種類がある。
行動随伴性を、「水が出ない」→「蛇口をひねる」(行動)→「水が出る」のように、行動の直前と直後の現象、出来事を連鎖的に表現して、随伴性を変える、原因となるものを抹殺する、代替行動を見つける、強化随伴性を消去する、などで行動を変える。
問題を機能同士の因果関係で捉える点は、I-TRIZのプロブレム・フォーミュレーション(PF)と同じである。
技術の分野でも、人の行動が問題となるものについては「行動分析学」の考え方が適用できる。
等価変換理論 歴史発展の論理の視点による本質移転開発 1944年
市川亀久彌
特定非営利活動法人日本創造力開発センター
あらゆる発明や開発は、発明/開発者が意識しているかどうかは別として、よく知っているあるものに新たに必要な観点を導入してそのものの固有の不要な条件をそぎ落として本質を抽出し(抽象化し)、今度はその本質に発明や開発したいものに必要な条件を加える、というプロセスを経て完成する。 等価変換フローチャートの手順
1.背景(問題を生み出した経験または対象)
2.問題の提起(目標の設定)
3.viの設定(観点の確立)
4.ε(問題の本質)
5.ΣAο(εを含んだ事例群=Aοライブラリー)
6.Aο (選び出された事例)
7.c(限定条件)の抽出
8.cε(本質と限定条件)結合
9.思考実験・試作
10.目標との一致度合いの検定
11.Bτ(目標を満足する創造)
「等価変換理論」がヒントにするアナロジーは具体的なものであるのに対し、I-TRIZがヒントにする一般的な解決策は抽象的なものである点で両者は異なっている。
しかし、いずれの場合も具体的な解決策を完成させるためには、具体的な問題の分野の既存の知識と新たに調査して入手すべき知識が必要であるといえる。
FMEA
(Failure Mode Effects Analysis)
故障モードの影響解析 1940年代
米陸軍
故障モード影響解析のことで、設計の不完全や潜在的な欠点を見出すために構成要素の故障モードとその上位アイテムへの影響を解析するボトムアップ手法である。 1.システムの機能・性能を確認
2.システムの分解レベルを決定
3.システムの仕様と製造図面を基に、機能ブロック図を作成
4.機能ブロック図から、信頼性ブロック図を作成
5.信頼性ブロック図を基に、各ブロック毎の故障モード(状態)を全て洗い出す
6.洗い出した故障モード(状態)を、現実的な観点から整理・統合する
7.整理・統合された故障モード(状態)の、推定原因を全て洗い出す
8.「故障の影響」「影響度」「単一・致命的故障」「調べ方」「防ぐ方法」をFMEAシートに記入する
9.設計変更等必要な場合に、FMEAシートの「防止対策処置の確認」を行う
自動車業界では、ISO 9000の技術仕様を定めた「ISO TS 16949」でFTA,、FMEAを参照しており、幅広く取り組まれている。
FMEAは不具合の防止を目的としているが、不具合を予測をする分析手法であり、不具合の防止策までは考えない。これに対して、I-TRIZのFP(不具合の予測と未然防止)は、不具合の防止策をも考える問題解決手法といえる。ただし、FMEAの書式を整えるものではないので、FMEAの代用はできない。
VE
(Value Engineering)
品質を維持したままでコストダウンを行う 1947年
米国GE社のL.D.マイルズ
公益社団法人日本バリュー・エンジニアリング協会
製品やサービスの「価値」を、それが果たすべき「機能」とそのためにかける「コスト」との関係で把握し、システム化された手順によって「価値」の向上をはかる手法である。
Value(価値)=Function(機能)/Cost(コスト)
1.機能定義
VE対象の情報収集、機能の定義、機能の整理
2.機能評価
機能別コスト分析、機能の評価、対象分野の選定
3.代替案作成
アイデア発想、概略評価、具体化、詳細評価
「VE」では、アイデア発想段階で使用する独自のツールを用意していない。そのため、一般的な発想法であるオブボーンのチェックリストを使ったブレーンストーミングを使ってアイデア出しを行うことが多い。しかしながら、「大きくしたら、小さくしたら、・・・」のような抽象的なチェックリストでは、具体的な改善案を提案することが難しい。
「VE」のアイデア発想段階を補うものとしてI-TRIZが有効である。
シネクティクス 異質馴化と馴質異化による類比思考 1950年
ウィリアム.J.J.ゴードン
シネクティクス社
自分にはまったく未知のもの(領域)のことをヒントに自分の問題解決を着想する「異質馴化」と、既知のものを新しい視点から見ることで新しい着想を得る「馴質異化」を駆使した「類比思考」を行う。
直接的類比:自然界,生物等の直接似たものを探し出して、それをヒントにアイデアを発想する。
擬人的類比:問題を自分がその要素になりきって、その視点から発想する。
象徴的類比:問題を抽象化して、シンボリックな視点から幅広く発想する。
1.問題を提示する
2.専門家による問題分析
3.解決の試案を発想する
4.解決目標の明確化
5.アナロジーによる発想を展開する
→直接的類比、擬人的類比、象徴的類比
6.アナロジーの選択
7.選択したアナロジーをさらに細かく検討し、ヒントとなりそうなものを探し出す
8.目標への適合
9.解決案の作成
ウィリアム.J.J.ゴードンは、与えられた問題(Problem as Given = PAG)を把握された問題(Problem as Understood = PAU)に置換する」必要性を述べており、真の問題を明らかにすることを指摘している。「眼鏡の改良」というPAGは、「眼球の焦点距離を補正するにはどうしたらよいか」というPAUであるとすると、コンタクトレンズが生まれる。つまり、「観点を変えてみれば同じ働きをする別のものにする」といった発想はI-TRIZに通じる。
TRIZのSLP(小さな賢人)法は、「シネクティクス」の擬人的類比を改良したものである。
システム
ダイナミックス
(Systems dynamics)
問題現象や因果関係をダイレクトにモデル化するシュミュレーション手法 1956年
米国マサチュセッツ工科大学
ジェイ・フォレスター
図式でモデルの要素間因果関係を記して、ソフトウェアにより数値シミュレーションモデルを自動生成する。
要素間の関係を把握しやすく、個々の理解している問題現象や因果関係をダイレクトにモデルにできる。
その特徴から、実験や広域的な俯瞰が困難である社会システム(ビジネス・政策など)のシミュレーションモデルを作ることに適している。
システムダイナミックスでは、最終的にコンピュータで数値シミュレーションを行い、将来予測や考察対象の特徴把握を行う。
1.採り上げる問題を決定し、問題領域(システム境界)を設定する
2.対象システムを観測して情報を集め、そのシステムを表現するのに重要な要素(変数)を抽出する
3.変数間の因果関係(フィードバックループ)を追跡し、その関係の強弱を定める意思決定機構を推定する
4.各要素をフローダイアグラムに表わしてシステムダイナミックスモデルを構築する
5.対象システムの挙動と比較し、差が小さくなるようにモデルを修正する
6.対象の構造が明らかにする
*諸要素の流れを「レベル」と「レイト」という概念を用いてモデル化し、変数間の関係を非線形の連立常微分方程式に数式化して、その初期値問題を解くことでシステムの挙動を再現、その構造を理解するとともに将来予測を行う。
「システムダイナミックス」から生まれた「システム思考」は、システムダイナミックスの一部である。
「システムダイナミックス」の数値シミュレーションによる定量分析は、I-TRIZで得た解決策の実装段階で利用できる。
システム思考
(Systems Thinking)
システムズ アプローチ
(Systems Approach)
システム工学
複雑な問題の解決技法 1956年
米国マサチュセッツ工科大学
ジェイ・フォレスター
システムダイナミックスから生まれたシステム思考では、数値シミュレーションによらず図示した構造からその特徴の把握を行ったり、ラフな振舞の予想をするために行われる。
物事をシステムとして捉え、その要素間の因果関係をグラフとして表し、その構造を利用して振舞の特徴把握や定性的な分析を行う考え方であって、システムの各要素は、環境やシステムの他の要素から分離した場合
、異なる振る舞いを見せる(全体論的なシステム観を持ち、デカルトの還元主義と相対する考え)という前提に基づく。 システム思考では、全体のシステムを構成する要素間のつながりと相互作用に注目し、システムの改善、変革を検討する。
経営工学の分野では、システム思考を適用する考え
方を「システムズアプローチ」(システム工学)という。
1.課題を設定し、クライアントを確認する 2.時系列変化パターングラフ(Sカーブ)を描く
3. 「今まで」のパターンの構造の仮説を立てる
4.フィードバック・ループ図を描く
→課題と関連するさまざまな関連要素がどのようにつながって構造を作り出しているか(因果関係:自己強化型ループ、バランス型ループ)を明らかにする
5.「このまま」のパターン(仮説)を確認する
6.構造の仮説を現場で確認する
7.「望ましいパターン」を創る働きかけを探る
8.システムの抵抗を予期する
9.働きかけ、抵抗への対策を選択し、実行する

*問題解決に当たっては、小さな力で大きく構造を変えられる介入点(レバレッジ・ポイント:12種類提案されている)を見つけるのがコツである。
外的刺激による精神的緊張を「ストレス」と名付けたハリス・セリエによれば、「天才とは、現実にとらわれない自由な世界で独創的な発想ができるだけでなく、これを現実世界に戻ってきて具体的に表現できる者である」という。
つまり、「現実の世界で認識した問題の本質を表現した現状モデル(As-Isモデル)の問題点を、この抽象化された世界で改良した改良モデル(To-Beモデル)を、現実の世界で実現するための具体的手段を検討する。」ことが天才の問題解決法といえる。
天才の問題解決法を常人が実行できるようにしたものがTRIZである。
「システム思考」のフィードバック・ループの考え方は、I-TRIZで因果関係モデルを作成するときに参考にすることで、より確度の高い考察が可能になる。
FTA
(FaultTree Analysis)
問題発生の因果と発生可能性 1961年
ベル研究所のH・A・ワトソン
ボーイング社
下位アイテム又は外部事象、若しくはこれらの組合せのフォールトモードのいずれが、定められたフォールトモードを発生させ得るか決めるための、フォールトの木形式で表された解析である(JIS Z8115:2000)。
信頼性または安全性上、その発生が好ましくない事象を取り上げ、この事象が発生する過程を論理記号とツリーを使ってトップダウン思考で展開し、発生経路および発生原因、発生確率を解析する。
発生した問題の分析や、想定される問題原因の推定の場面で、FTAを使い、論理的に考えることで、経験だけでは陥りがちな落とし穴に事前に気がつくきっかけが得られ、適切な対策ができるようになる。 自動車業界では,ISO 9000の技術仕様を定めた「ISO TS 16949」でFTA, FMEAを参照しており、幅広く取り組まれている。
「FTA」は、I-TRIZのプロブレム・フォーミュレーション(PF)を使った問題メカニズムを発見する際に、参考になる。
NM法 自然界や身の回りの技術の類比発想 1965年
中山正和
NM-T型は、最後に出されたコンセプトの中から、使えそうなアイデアを見つけだしていく。A型、S型の前段として行われることが多い。
NM-A型は、空間結合によるもので、T型で出たコンセプトを仮説を立てながら、一見関係なさそうなものにつながりを見つけだそうとするもの。新技術や用途開発などに使われる。
NM-S型は、時間結合によるもので、A型とは異なり、T型で出たコンセプトに因果関係を見つけ出し、関係づけようとするもの。営業戦略の立案などに使われる。
NM-H型は、装置や道具の改良などに使われる。アナロジーの背景を探った段階で、出てきた背景毎に、「これは使えないか」と問い直していく。
1.課題(TM)を決める
2.キーワード(KW)を決める
3.類比を発想する(QA)
4.アナロジーの背景を探る(QB)
5.アイデアをQBとテーマを結びつけて発想する(QC)
6.QCを使って解決案にまとめる(ABD)
「NM法」では、アイデア発想のヒントになるアナロジーを自然界や身の回りのものに求めるが、幼年期、少年期に自然に触れる機会の少なかった人には、それらのイメージがないため、これらのヒントが使えない。
I-TRIZでは、約500種類の発想概念(オペレータ)と約2,000の具体例がアイデア発想のヒントとして使用できるので、その点の問題はない。
KT法 問題解決と意思決定のプロセス 1965年
ケプナー
トリゴー
必要な情報を集め、的確な結論を合理的に導き出すための思考の手順(思考プロセス)を整理し体系化したもの。必要十分な情報を迅速に集め、「事実」に基づく的確な問題解決や最良の意志決定を行い、「思い込み」や「憶測」による誤りを食い止めることができる。
合理的な思考プロセスを組織の中での「共通言語」「共通アプローチ」「共通ツール」として用いることにより、組織の中に存在する多種多様な経験と知識を活かしつつ、問題解決や意思決定の精度と効率を飛躍的に向上させることができる。
さらに、個々のメンバーのクリティカル・シンキング・スキル習得にも役立つ。
状況分析(SA:Situation Appraisal)
1.何が問題か(状況ステートメント)
2.その問題はどうなっているか(関心事と分離)
3.その問題を解決するには具体的に何をするか
(ステートメント化)
4.何から手をつけるか
問題分析(PA:Problem Analysis)
1.何がどうまずいか(問題ステートメント)
2.何がおきて何がおきていないのか(IS/IS NOT)
3.何が違うか(区別点、変化点)
4.考えられる原因は何か
決定分析(DA:Decision Analysis)
1.何のために何を決めるか(決定ステートメント)
2.具体的な狙いは何か(目標)
3.考えられる案は(MUSTとWANTを切り分け)
4.それを行うとどんなまずいことがあるか 潜在的問題分析(PPA:Potential Problem Analysis)
1.いつまでに何をしたいのか(実行ステートメント)
2.考えられるリスクは
3.リスクを起きないようにするにはどうするか
4.リスクが起こったときはどうするか
「KT法」は、その知識の習得と実践するための訓練について提供側による厳密な制限があるため、実務レベルで使いこなすまでにクライアント側の負担が大きい。
そのため、現場からのボトムアップによる導入が難しい。
I-TRIZは、オペレータや具体例の全部を参照することを望まなければ、その思考プロセスを身に着けること自体は難しくない。
水平思考
ラレラル・シンキング
(Lateral Thinking)
見方を変えて革新的な発想を生み出す 1972年
エドワード・デボノ
既存の枠に捉われずに、視点をさまざまに変えてみることにより問題解決を図る。
非連続的であり、結果が良ければ途中の過程は問題にならない。結論に達した後でも、さらに確実な方法を求めることができ、部分的に適切だという方法には固執しない。
1.思考を邪魔するもの(思い込み、常識)を取り除く
2.視点を変えてみる(鳥の目:マクロ、蟻の目:ミクロ、魚の目:トレンド)
3.思考パターンを変えてみる
4.前提(制約条件、課題、目標)を疑う
5.前提を変化させる(評価軸を変える)
6.組み合わせる(オズボーンのチェックリスト)
7.アイデアを出し、実践・評価する
論理的思考では発想できないアイデアを求める際には、視点を変えることが当然必要になる。
「水平思考」は、視点を変えるという意味では、I-TRIZのシステムアプローチと同様の効果が得られる。ただし、システムアプローチには、問題解決に役立つ資源を探索するという別の目的もある。
QFD
(Quality Function Deployment)
品質機能展開
顧客が要求する品質を基に設計品質を決定し実現する
JIS Q 9025:2003
1972年
赤尾洋二
水野滋
一般財団法人日本科学技術連盟
顧客のニーズを技術に結びつけ、どのニーズに答え(製品企画)、どの技術を開発するかを決定する作業であって、ニーズ(要求品質)と技術(品質特性)を結びつけたマトリックス(品質表)を作成し、品質表上で重要度の採点を行い、その結果をもとに製品を企画し、技術を開発する。最終的には、その設計の意図(品質特性)を製造工程まで展開する。 1.ユーザーの要求を把握する
2.原始データを要求項目に変換する
3.要求項目から要求品質に変換する
4.要求品質展開表を作成する
5.品質要素展開表を作成する
6.品質表を作成する
7.企画品質を設定する
8.要求品質重要度を品質要素重要度に変換する
9.設計品質を設定する
成熟期にあるシステム(商品やサービス)の場合には、ユーザ自体がニーズを理解していないため、顧客の声(VOC:Voice of customer)を聞いても、正しいユーザの要求が入手できない。そのため、品質機能展開の要求項目の信ぴょう性が疑わしいものとなり、設計された商品やサービスが売れないという現象が起きる。
I-TRIZの「戦略的世代進化(DE)」を使用する場合には、顧客の潜在ニーズを満足する商品、サービスの提案をするといった意識が働くようになっている。
比較発想法 1974年
金野正
われわれは、あるものについて頭の中で思い浮かべているときでも、実際はそれとは別のあるものを持ってきて、この二つを並べて考えていることが多い。それだけではなく自分ではまったく意識しないうちに何かほかのものと比べていることも少なくない。つまりはっきり意識していようといまいと、日常生活ではしばしば我々は「比較」を行っている。そのような従来からある思考過程をそのまま活用して、比較による発想を取り入れたものである。
比較には、分析という足元を固める目的のほかに、新しい発想を得るためと、得られた発想を評価するための、大きな目的がある。
1.ある対象Aを取り上げ、その中で本質的と思われる要素に注目する。
2.他のものは気にしないで、それだけを取り出す。
3.それを核として必要な要素を補足し、別の対象Bに仕上げる。
「等価変換理論」を使いこなすのは難しいが、「比較発想法」なら異分野の知識を積極的に利用することが比較的容易である。ただし、異分野のアナロジーを自分で探さなければならないのは両者とも同じである。
I-TRIZでは、事前に異分野の知識を利用するためのデータベースが備わっているため、自らアナロジーを探しに行く手間が省ける。
エンジニアリングの方法 創造的問題解決の技術 1976年(日本語出版)
エドワードV.クリック
問題とは、ある状態(または状況)から他の状態に変換したいという欲求に導かれて発生するものであって、解決策とは、望まれている変換を達成してくれる一つの手段である。
解決策の評価基準として、「エレガンス性=その解がなしとげる目的/その解の複雑性」を採用する。
1.問題の設定(設計プロセス1)
2.問題の分析(設計プロセス2)
インプット、アウトプット、要求仕様、制約条件、評価基準を明らかにする
3.代替解決案の探求(設計プロセス3)
解が有している特性に対して系統的に質問をあびせる
4.代替案の評価(設計プロセス4)
5.詳細設計(設計プロセス5)
I-TRIZの「システムアプローチ」と共通する概念(インプット、アウトプット、要求仕様、制約条件、評価基準)が採用されている。
解決策の評価基準である「エレガンス性=その解がなしとげる目的/その解の複雑性」も、I-TRIZの理想性の概念に通じる。
エンジニアリングデザイン 工学設計の体系的アプローチ 1977年
G.ポール
W.ベイツ
製品の企画から設計および生産プロセスと品質保証の検討まで製品開発の一連の過程について、その本質を一つの体系にまとめあげた手法である。
全体機能は、下位課題に対して、それぞれ識別可能な下位機能に直接分割することができる。
技術システムにおける相互作用には、機能的相互関係としての機能構造、物理的相互関係としての動作構造、構造的相互関係としての構築構造、システム的相互関係としてのシステム構造とがある。
1.状況を分析する
2.探索戦略を定式化する
3.製品アイデアを見つけ出す
4.製品アイデアを選択する
5.製品を定義する
6.明確にし推敲する
7.設計する
システムの目的機能の入力と出力は、それぞれ物質、エネルギー、信号(情報)の3つの基本概念としており、TRIZの「物質-場分析」に通じる。
問題には、(1)望ましくない初期状態(不満足な状況の存在)、
(2)望ましい目標状態(満足な状況の実現)、
(3)望ましくない初期状態から望ましい目標状態への移行を妨げる障害、
三つの要素がある。設計解を見つけ出すことは、矛盾を解決することが含まれるとし、I-TRIZの概念と一致している。
ベンチマーキング 他社の優良事例(ベストプラクティス)を分析し、学び、取り入れる手法 1970年代後半
ゼロックス
利害関係者価値を創造し業績を上げるため、業界内外の優れた方法(ベストプラクティス)と自社の業務方法を比較し、現行プロセスとのギャップを分析し、知(知識・知恵・知心)を結集して自社に合ったベストプラクティスを導入・実現することにより現行の業務プロセスを飛躍的に改善・改革する、体系的で前向きな経営変革手法である。 1.経営ビジョンに基づいた強み弱み分析
2.ベンチマーキング対象プロセスの大枠の決定
3.ベンチマーキング・プロジェクトチームの編成
4.ベンチマーキング実行計画書の作成
5.現行プロセスの分析と主要業績指標の決定
6.ベンチマーキング対象プロセスの絞り込み
7.ベストプラクティスに関わる公開情報の収集
8.ベンチマーキングの相手企業の選定
9.ベンチマーキング質問書の作成
10.相手企業での情報の収集
11.現行プロセスと相手企業プロセスとの比較・分析
12.理想ベストプラクティスの決定
13.採用ベストプラクティスの決定
14.ベストプラクティス導入実行計画書の作成
15.ベストプラクティスの導入と経営改革
I-TRIZでは、積極的に業界内外の優れた方法を参考にすることはないが、市場競争に勝つためには当然考慮に入れるべきことであるため、必要に応じて採用するとよい。
DSM
(Design Structure Matrix)
設計構造マトリックス
複雑なプロセスを図示できるプランニング・ツール 1970年代
Donald V. Steward
繰り返しやフィードバックが多い開発プロセスをわかりやすく表現するために開発された、プロセス改善のための分析技法である。
複雑な開発プロセスを1ページのマトリックス表に収めることが可能である。
DSMを利用することで、これまでは分析が困難だったシステムの依存関係をより直感的に可視化・分析することが可能になる。
1.製品開発に必要な作業を特定する
2.最初に、あらゆる作業について現在進めている順番で上げていき(縦方向と横方向に同じ順番で並べて)マトリックスを作る
3.横軸の作業項目ごとに、縦軸で対応している作業から必要な情報が供給されている欄に×印をつける
4.作業の順番を変えることで、フィードバックの印の数が減るかどうか判断する
5.作業の編成を見直す
6.作業の一部の中身を変更することで、情報交換を減らす
7.計画外の手戻りをなくす
これまでの因果関係モデル(有向グラフ)という表現方法 (サブシステムを四角形の箱で、サブシステム間の依存関係を矢印で表す) は、規模が大きくなるにつれて乱雑になり、理解するのが困難になる。
「DSM」では、システムの構造 (編成) と依存関係の情報がマトリックスで表示されるため、直感的でわかりやすく、システムの構造の理解および操作が容易になる。
ソフト・システムズ方法論 複雑な問題の解決技法 1970年代半ば
ピーター・チェックランド
ジム・スクールズ
混沌とした状況を単純化や抽象化によってではなく、「意味」、「コンセプト」をキイとして、それぞれの状況の複雑さやユニークさを尊重しながら、「探索・学習型」アプローチによって本質に迫り、状況の革新を追及する。 1.問題的であると考えられる問題状況
2.表現された問題状況
3.関連する意図的活動システムの基本定義
4.基本定義に名付けられたシステムの概念的活動モデル(因果関係モデル)
5.モデルと現実世界との比較
6.変革:システム的に望ましく、文化的に実行可能
7.問題状況を改善するための行為
問題を機能同士の因果関係で捉える点は、I-TRIZのプロブレム・フォーミュレーション(PF)と同じである。
PMD
(Purpose Measure Diagram)
目的と手段の関係を明らかにする 1976年
江崎通彦
われわれが意識することなく行っている課題実現のための考え方、手順、行動を具体化し、問題の解決を図るための手法である。
課題実現のための思考や行動の条件を明らかにし、さらにそれを手順化して、目で見えるように展開したものである。
1.テーマの決定
2.「要するに、何をしさえすればよいのか?」の質問に対する答えのカードを作成する
3.そのカードを「~を~する」ために「~を~する」という順序で、上の方を目的、下の方を手段の関係で図のように縦に並べる
4.カードの過不足を調整してダイヤグラムを完成する上の方は、抽象的な上位目的、一番下の表現は、その目的を実現するためには、「どこから手をつければよいかのエントランス・キーワード」が見えてくる。
「PMD」は、人間の価値観という視点では物事を捉えているため、目的と手段の関係を明らかにする。
I-TRIZのプロブレム・フォーミュレーション(PF)は、機能同士を原因と結果の関係で表しているが、見方を変えると、手段と目的の関係を表しているともいえる。
FBS
(Function Breakdown Structure)
システムやモノの最適な構造・構成のイメージを創り出す 1976年
江崎通彦
システムやモノに与えられたテーマ(課題)実現のために、階層的な機能をイメージ化し(そのためのモノやシステムの構造化を図る)、各イメージ実現のためのアイデアを創出する方法である。 1.課題(テーマレベルⅠ)
2.要するにそれでわれわれは何をしようとしているのか?(機能レベル)
3.そのためのアイデア2~3案は?(アイデアレベル)
4.アイデアの比較結果は?
5.どのような区分に分けてそれを実現したらよいか?(テーマレベルⅡ)
6.それで何をしようとしているのか?(機能レベルⅡ)
7.そのためのアイデア2~3案は?(アイデアレベルⅡ)
「FBS」は、アイデア発想の結果得たコンセプトに形を与えるための思考プロセスを明らかにしている。
I-TRIZでは、積極的にスケッチを描くことをしないが、機能を実現するイメージを描くことで別のアイデアが創出されることもあり、商品開発が目的である場合には有効である。
ステップリストの方法 思考や行動の手順書を作成する 1976年
江崎通彦
具体的な行動を起こすために、落ちのない思考や行動を段階的に手順化するための手法である。
各ステップの内容を「インプットの項目→事前保証活動→アウトプットの項目→事後保証活動」といった因果関係でまとめ、特定のステップの事後保証活動は次のステップのインプットの項目になるように、全ステップを因果関係でつなぐことで、課題を実現するための行動の手順書が完成する。
1.PMDによってメイン・キーワードとエントランス・キーワードを把握する
2.「試作または実行」の「アウトプット項目」にメインキーワードから見て適切なアウトプットの項目名を記入する。
3.「第一次情報収集」の「インプット項目」に1段階のアウトプットに必要なインプット要素を記入する。
4.3を使って2の最終目的を達成するためにはどのような段階(過程)を経て行けばよいかを割り付ける。
5.各段階のアウトプット項目に対するインプット項目事前保証活動、アウトプット項目、事後保証活動は次の段階に結びつく因果関係を持つものとする
6.できあがったステップリストの項目の過不足を調整してステップリストを完成する
I-TRIZによって得られたコンセプトを実装する場合に、どのような手順で実装に必要となる作業を進めたらよいかを知るには、「ステップリストの方法」を採用するとよい。
DTCN
(Design To Customer's Needs)
問題解決と課題実現のための知識から知恵を作り出す方法 1978年
江崎通彦
(1)問題と課題の関係を明解にし、
(2)目的には上位目的と目標レベルの目的があるが、その区分を明解にし、
(3)「意思決定のプロセス」という言葉と「意思決定」という言葉の違いを明解にし、
(4)PM(プロジェクトマネジメント)とSE(システムズエンジニアリング)の関係を的確・簡潔に説明し、
(5)意思決定の・判断のメカニズムについて、決め手になる説明を行い、
(6)知識から知恵を創りだす方法を具体的な手順として整理し、
(7)ナレッジマネージメントの方法によって知恵を創りだす方法を知識として確立する。
知識から知恵を創り出すために、以下の7つの基本手法を使う。
1.PMDの方法(課題を実現するための意思の方向とあるべき姿を表わす)
2.ステップリストの方法(行動の手順書)
3.FBSの方法(あるべき姿の内容の構造・構成)
4.WBSフェージング・テーマ・テクニック(検討をするべきテーマを事前抽出する)
5.3-5フェーズ・インプルーブメントの方法(ステップリストの補助手法)
6.ROメッソド(体制づくりの方法)
7.実施計画書の方法
組織の改革が必要な場合には、問題にしている組織だけではなくその組織に関係のある資源についても考慮しなければならない。
そのような、問題領域の大きなシステムの問題の場合には、「DTCN」のような体系的な思考プロセスが有効である。
I-TRIZによって得られたコンセプトを実現する場合に、「DTCN」の一部を付加的に利用することは有効である。
タグチメソッド
品質工学
従来の品質管理では見つからなかった問題点を明らかにし、未然に防止する方法を提供する 1980年
田口玄一
品質特性のばらつきが少ない製品を、開発・設計及び工程設計段階で作りこむための、工学的、統計的手法であり、品質工学とも呼ばれる。
改善を効率的に行うには、
(1)効果を確実にしかも短時間で確認する手段は、いじめればわかる(SN比の活用)。
(2)根本メカニズムに関係して効果が大きいアイデアを引き出す手段は、試せばわかる(パラメータ設計)。
製品開発は、製品設計の前に、パラメータ設計のやり方で、事前に優れた技術開発をしておき(フロントローディング)、製品設計では、各種条件を総合的に判断して最適なバランスに設計する「二段階設計」を行う。
パラメータ設計の例
1.テーマの分析
2.目的機能の明確化
3.理想機能の定義(y = \beta M)
4.計測特性は何か(信号因子とノイズの選択)
5.SN比や感度を求める
6.制御因子を決める
7.直交表に制御因子を割り付けて、信号やノイズとの直積実験を行う
8.データ解析を行う
9.要因効果図を作成して最適条件と現行条件やベンチマーク条件を求める
10.確認実験で最適と現行の利得の再現性をチェックする
11.再現性が悪い場合は特性値やノイズや制御因子の見直しを行う
従来の未然防止の方法論であるFTA、FMEAを使用する技術者は、その人の知識や経験から予測できる不具合には必ず対応策を反映するので、市場で不具合は発生しないはずである。しかし、実際には想定外の不具合が発生してしまう。
人間の能力の限界(知識や経験の限界)を前提とした、見落とし、未知、想定外に対応する予測法としての「タグチメソッド」が新しい未然防止の方法論といえる。
「タグチメソッド」の思想は、「リーン製品開発方式」と一致しており、I-TRIZと併用することで、設計品質が多いに高まる。
公理設計
原著:The Principles of Design N. P. Suh, Oxford University Press, 1990
最適設計案の探索 1980年代
Num Suh
設計の必要機能が互いに独立であるときに、“良い"設計が行われる(独立公理)と、"情報"量の最小化が達成されていることにより“良い"設計である(情報公理)という2つの公理は、その時合成して作られた解決策がどの程度“良い"かを調べることで、最良な設計解を導き出す。 1つ目の設計公理は「独立公理」と呼ばれ、要求機能が互いに独立している設計を是とする。
たとえば、蛇口の設計において、温度の調整と水量の調整という2つの要求機能を満たす設計解を考える(干渉設計)。温水と冷水の量を調整するレバーを設けた場合、温度と水量は同時に調整される(2つの要求機能が互いに干渉する)。一方、水量比と全体水量を調整するレバーを設けた場合、温度と水量は独立に調整される(独立設計)。
もう1つの公理は「情報公理」と呼ばれ、情報量が最小の(成功確率が最も高い)設計を是とする。
情報量は、要求機能のばらつきの範囲と、それが設計の許容範囲を満たす範囲の比を用いて算出される。
公理的設計においては、独立公理に基づいて独立設計を満たす設計解を得るとともに、それらの設計解を情報公理に基づいて定量的に比較することにより、最良の設計解を導出する。
スーの設計プロセスに関する流れ図の中の設計者が設計解を生成している「案出と創造」部分に、TRIZの発想段階があてはまる。
一般の設計は「トレードオフ」のバランスを取ろうとするものであるが、TRIZは「トレードオフ」を除去するという考え方である。
コンセプトの有効性を評価する手段を提供している公理および必要機能の評価と各階層問題の取り扱い、という新しい観点を通して、「公理設計」はTRIZの問題定義と問題解決の段階の質を改善する可能性を提供している。
SIT
(Systematic Inventive Thinking)
構造化発明思考法 1980年代
Genedy Filkovsky
発明的解決策は,、どのありきたりの解決策にも共存していない二つの特有の性質を持っている。第一の性質は、新しい要素を加えられることがないこと(CW:閉世界条件)である。第二の性質は, 二つの変数の基本的な関係が質的に変化したこと(QC:質的変化の条件)である。 1.問題の定式化
問題解決の課題の目標を二つの十分条件を用いて設定する。CW条件が現在の制約に追加され、一方、QC条件が目標を変更する。
2.必要とされる物理的目標状態を導く概念的解決策を定式化し、3へ進む。
3.新しい操作を実行する仮想的なオブジェクトを追加することにより、システムが一時的に拡張される戦略(統合法、乗算法)を採用する。
4.2ができなければ試行錯誤のプロセスにおいて、既存オブジェクトたちとその組織の構造を変える再構築戦略(除算、可変性の増加)を採用する。
5.拡張戦略(修正)または再構築戦略(移行)により、アイデアを発想する。
機能を決定する前に一つの形を創ることによってアイデアを作り出すことは、心理学者のロナルド・A・フィンクらによって、「形に機能がついてくる 」思考として発表されている。多くの実験の結果、ロナルド・A・フィンクらは, 「機能より前に形を決定するように制約されたとき、被験者各人は一層創造的になる」ことを示した。
このような考えは、I-TRIZの「進化のパターン/ライン」を使ったアイデア発想法の思考プロセスと同じであり、その有効性が立証されていると考えてよい。
ソリューション・フォーカス 人と組織の問題を解決する解決志向のコミュニケーション心理学
人に関する問題を解決するには、人とコミュニケーションをとる必要がある
1980年代半ば
スティーヴ・ディ・シェイザー
インスー・キム・バーグ
通常、何か問題があるとき、その問題や原因について考える(問題思考)が、ソリューション・フォーカスでは、問題が解決された状態やすでに解決されている部分について考える(解決思考)。
【3つの原則】
1.壊れていないなら、修復するな
2.一度やってうまくいったなら、またそれをせよ
3.うまくいっていないのであれば、何か違うことをせよ
1.うまくいっているところを探す(成功ポイントの発掘)
2.例外を探す(例外的な成功を見つける)
3.なぜうまくいっているのか考える(成功原因の追究)
4.すでにできていることの中で、繰り返せることを探す(成功状態の拡大)
5.すべてがうまくいっている状態を、明らかにする(成功状態・理想状態の明確化)
6.小さなゴールを設定する(現実的な未来の構築)
7.スケーリング(状態を数値化する)
特別なツールを使うことなく、「これはリソース(問題を解決するために利用できるすべてのもの)にならないだろうか?」と考えるようにしていると、解決の糸口がそこから見つかるようになってくる(TRIZの利用可能な資源)。
未来を現実のものにするには、自分を、すべての問題が解決したという理想の状態に置き、そのうえで、そのとき何が起こるのかを考え、明らかにする(TRIZのSLP法)。
リアリティーがあるように具体的に詳細にイメージしていくことが、解決へ向かう秘訣である。
PMBOK
(Project Management Body of Knowledge)
プロジェクトマネージメントの知識体系 1987年
アメリカの非営利団体PMI(Project Management Institute)
従来の「QCD」(品質・コスト・納期)の3つに着目したマネジメント手法と区別して、「モダンプロジェクトマネジメント」と呼ばれることもある。PMBOKは、プロジェクトマネジメントの遂行に必要な基本的な知識を汎用的な形で体系立てて整理したものである。
PMBOKでは、プロジェクトを遂行する際に、スコープ(プロジェクトの目的と範囲)、時間、コスト、品質、人的資源、コミュニケーション、リスク、調達、統合管理の9つの観点(「知識エリア」と呼ばれている)でマネジメントを行う必要があるとしている。
プロジェクトの流れを、「立上げ」「計画」「実行」「管理」「終結」という5つのプロセスにわける。
どのプロセスで何を作成・管理すべきかということが、9つの知識エリアごとに定義されている。例えば、スコープ管理の場合、計画プロセスでスコープの計画や定義を決定し、管理プロセスで成果物の検収やスコープの変更の管理を行う。また、スケジュール管理の場合は、計画プロセスで作業の定義や所要時間の見積、スケジュールの作成を行い、管理プロセスでスケジュールの進捗管理を行う。
I-TRIZを採用したプロジェクトが成功するか否かは、メンバーの意気込みだけでなく、そのプロジェクトの運営方法に良し悪しが大きく関係する。そのため、プロジェクトを成功させるには、「PMBOK」に限らず、何らかのプロジェクトマネジメント手法が必要になる。
デザイン思考 人間主体の発想でイノベーションを起こし、社会に新たな価値を提供する IDEO社ティム・ブラウン
スタンフォード大学D.school
1987年
P.G.ロウ
『デザインの思考過程』(Design Thinking 1987年)慶応大学
人々の生活や価値観を深く洞察し、ユーザーが何を潜在的に求めているのかを感知しながら、プロトタイピングを通じて、新しいユーザー体験を提供するイノベーション・プロセス"である。 1.共感する
(1)観察する(ユーザーの振る舞いを見る)
(2)関わる(ユーザーと交流・インタビューをする)
(3)没頭する(ユーザー体験をと自分でも体験する)
2.問題定義
共感して発見した説得力のあるニーズとインサイトを分解・統合し、具体的で意味のある挑戦を選び出す
3.アイデアを発想する
理想の状態にたどりつくことを支援するアイデアを生み出す。
4.プロトタイプを作る
生み出したアイデアを実際に形にすることで、うまくいきそうな部分を確認したりさらにアイデアを得るきっかけにする。
5.アイデアを評価する
本当に目的を達成できるのかどうか、ユーザーの声を元にアイデアを検証する。
デザイン思考ワークショップに参加しても、イノベーションは生まれない。それはあくまで手段である。重要なのは「何のために」、という目的である。自分が何かやりたいという思いをもとに、それを超えて(究極には共通善に向けて)社会や世界をよりよく変えて行こうという目的意識である(2014年2月27日のJIDA(日本インダストリアルデザイナー協会)フォーラム「デザイン思考のデザイン」紺野登氏の基調講演の草稿)。
「デザイン思考」では、アイデアを発想する際に使用するツールが単なるブレーンストーミングである。イノベーション・プロセスを謳うにしては心細い。
「デザイン思考」のアイデア発想の生産性を向上させるためには、I-TRIZを大いに採用するとよい。
ブレークスルー思考 新たな思考パラダイムのためのハイブリッド思考エンジン 1990年
ナドラー
日比野省三
日本企画計画学会
研究アプローチまたは分析アプローチと知られている従来の思考プロセス(デカルト思考)は、特定分野の問題を解決するものにすぎなった。デカルト思考は、要素還元論による真実・事実を求めるパラダイムなので、「解決策は無限にある」という思考がない。
変化の激しい現代においては、「過去の延長線上に未来はない」ため、「物事の本質・根本に戻って考える」というパラダイムが求められる。根本に立ち戻り、「どうあるべきか」を考え、「未来から学びながら」「今何をすべきか」を問う時代になってきた。解決策探索の根本は目的であり、目的(根本)は人間の認識によって変わる。
新たな思考パラダイムは、
(1)ユニーク差の原則、
(2)目的展開の原則、
(3)未来から学ぶ「あるべき姿」の原則、
(4)システムの原則、
(5)目的「適」情報収集の原則、
(6)参画・巻き込みの原則、
(7)継続変革の原則、
の7つの原則にまとめられる。
1.考え抜き(根本を問う)
(1)参画・巻き込みの原則を用いて、集合天才を創る
(2)ユニーク差の原則を用いて、場の設定を決める
(3)目的展開の原則を用いて、場の視点から目的・根本を探索し、着眼する目的(根本)を決める
(4)価値観、物差し、目標値を設定する
2.拡げ抜き(あるべき姿を探求する)
(5)未来から学ぶあるべき姿の原則を用いて、アイデアを展開しアイデア部品を出す
3.まとめ抜き(現実に実行可能にしていく)
(6)着眼目的、価値観、物差し、目標値を達成するように、アイデア部品をまとめて、新しいコンセプトを創る
(7)システムの原則を用いて、仕組みを創る
(8)目的「適」情報収集の原則を用いて、解決策を創り、実行・実現するために必要な情報を最小限に集める
4.やり抜く(実現し、成果を出す)
(9)ブレークスルー思考を使って、アクションプランを作り、実行する
(10)継続変革の原則を用いて、「次の手」を組み込み、「次の手」を打つ
「ブレークスルー思考」の威力は、目的展開によるターゲットとする目的を明確にしているところからきている。
I-TRIZの発明的問題解決(IPS)では、現実に問題を抱えているシステムについて検討するため、機能同士の原因と結果に注目している。
I-TRIZの戦略的世代進化(DE)では、未だ存在しない次世代の商品・サービスを提案する必要性から、機能同士の目的と手段に注目する。その際に、目的展開を行うことになる。
「ブレークスルー思考」では、アイデア発想を支援するツールとして、異分野の知識を積極的に利用する「比較発想法」と同様の思考プロセスを採用している。
「ブレークスルー思考」のアイデア発想の生産性を一層向上させるために、I-TRIZを採用するとよい。
創造設計原理
創造設計学
設計における課題設定、創造設計、知識活用 1990年
畑村洋太郎
中尾政之
思い(顧客要望、潜在欲求)を言葉(課題、要求機能、顕在欲求)に、言葉を形(設計解、解決案)に、形をモノ(生産条件、構造、形状、具体策)にするための設計思考過程を思考展開図で可視化する。思考展開図は、機能、制約、機構、構造、選択といった要素を連鎖的に表現することで作成する。設計解は、公理設計を使って最適化する。
設計者が設計時に頻繁に考える機能を大別すると、動かす、測る、作る、強くする、変える、考える、の6種類の高位機能に分類される。高位機能は思考の対象分野に強い関係あって、たとえば、加工分野の「作る」では、削る、磨く、組み立てる、固定する、などの高位機能群が、材料分野の「強くする」では、破壊する、変形する、腐食する、摩耗する、などの高位機能群が含まれる。
思考展開図を作成する段階で、
(1)課題を構造化する、
(2)心理的惰性から脱出する、
(3)目的化した手段を再構築する。
思考展開図を作成する過程で、何かしらの叩き台的なアイデアが生まれたら思考演算子を使って目的とする設計解を得る。
思考演算子は空間、時間、作用、物質、現象、制約の6個の思考対象に大別され、思考対象にはそれぞれ8個程度の思考演算子(四則演算、機能逆転、場の視覚化、同角写像、第3物質挿入、制御排除、時間分割)を設けている。
創造設計エンジンのソフトウェアが完成されており、大学生が創造設計演習で使用しているとのことである。
また、「創造設計データベース」が公開されているので、I-TRIZを実施した際に得られた解決コンセプトを実装する設計段階でこれを利用するとよい。
(http://www.sydrose.com/creativedesignengine/)
バランス・スコアカード 将来の企業における業績評価 1992年
ロバート・S・キャプラン
デビッド・ノートン
戦略・ビジョンを4つの視点(財務の視点・顧客の視点・業務プロセスの視点・学習と成長の視点)で分類し、その企業の持つ戦略やビジョンと連鎖された財務的指標、及び非財務的指標を設定する。 1.ビジョンを実現可能な目標に翻訳する
2.ビジョンについて議論し、個々の業績とリンクさせる
3.ビジネス計画を立案する
4.フィードバックと学習により、戦略に修正を加える
「バランス・スコアカード」を採用することで、I-TRIZを実施した際に得られた解決コンセプトを実現することが、企業利益とどのように関連しているのかを目で見てわかるようになる。
プロジェクトメンバー以外の企業内の関係者を説得するツールの一つとして、「バランス・スコアカード」は有効である。
リーン製品開発方式 リーン生産方式を製品開発に応用したイノベーションを系統的に生み出す方法 1993年
アレン・ウォード
デュワード・ソベック
ゴール・システム・コンサルティング株式会社
未知の領域に対して少数の代替案しか考え出さずに設計し始めるといった「ポイントベース開発」から、多数の代替案を考え出して並行して評価しながら解決案を徐々に絞り込んでいく「セットベース開発」への転換を図ることで、詳細設計での手戻りを防止し、開発効率を向上させる。 1.顧客関心事の関係を示すトレードオフ曲線の作成
→設計空間内の領域を徐々に狭める
2.設計パラメータ間の因果関係図の作成
3.LAMDAサイクルの実行
4.簡単な実験による知識獲得と記録
5.過去の解決策の知識を有効利用する
構想設計、試作段階の思考プロセスを明らかにしている点で、I-TRIZを実施して得らえた解決コンセプトを詳細設計につなげる手法として有効である。
トレードオフ曲線による管理手法は相反する2つの特性値間の最適化であり、その先に相反する2つの特性値間の矛盾を解消する「技術的矛盾の解決」が位置づけられる。
TOC思考プロセス
(Theory of Constraints/Thinking-Process)
目標実現のための体系的な問題解決アプローチ 1990年代前半
ゴールド・ラット
日本TOC協会
組織が目的達成に向けて活動するうえでの本質的な問題を発見し、それを解決した""あるべき姿""を描き、それを実現するためのプランを策定する体系的な問題解決アプローチである。
何を変えるか?:変えなければならない本質的な問題を見つける。
何に変えるか?:「何を変えるか?」で見つけた本質的な問題に対する解決策を見つける。
どのように変えるか?:「何に変えるか?」で見つけた解決策を実行するための計画を策定する。
1.「何を変えるか?」を見つけるために、「現状構造ツリー」を作成する。
2.「何に変えるか?」の手段を決めるために、「対立解消図」を作成する。
3.2の手段を採用した結果を予測するために「未来構造ツリー」を作成する。
4.「どのように変えるか?」という段階で、最終的に決定した解決策を実行のための「前提条件ツリー(ロードマップ)」を作成する。
5.ロードマップに沿った解決策の実行計画である「移行ツリー」を作成する。
I-TRIZの各種手法(発明的問題解決(IPS)、不具合対策(FA、FP)、知的財産権制御(CIP)、次世代商品、サービスの提案(DE)、人、組織・経営問題(KW))に共通に使用されるツールとして、因果関係モデルがある。
「TOC思考プロセス」で使用されている各種ツリーは、機能同士の目的と手段または原因と結果を表しており、主に人や組織の問題を解決するために使用される。
I-TRIZで使用している因果関係モデルは、適用分野ごとに最適な解決指針が提示される点に特徴があるので、I-TRIZのKWが「TOC思考プロセス」を進化させ得る。
IPS
(Inventive Problem Solving)
対応ソフトウェア
IWB
(Innovation WorkBench)
発明的問題解決
(技術的難問の解決)
1994年
アイディーション・インターナショナル社
アイディエーション・ジャパン(株)
製品の開発や使用に関連して遭遇する技術的な難問を克服する目的で使用する強力な思考手順である。IPSはすべての技術分野で、研究、開発、生産技術、安全管理、品質管理、品質保証などに関する問題の解決に使うことができる。 1.目標の確認
(1)システムアプローチ、資源把握
2.課題のモデル化
(1)プロブレムフォーミュレーションと方針決定
3.アイデアの発想
(1)オペレータを使ったブレーンストーミング
4.方策案のまとめ
(1)アイデアの分類
(2)方策案の単純化
5.結果の評価
(1)二次的問題の解決
(2)不具合の予測と予防
(3)進化のパターン/ラインの適用
(4)実行計画の策定
機能同士を原因と結果の関係で連鎖した因果関係モデルにより問題のメカニズムが明確化されるため、領域内も問題点を網羅的に検討できる。
因果関係モデルから得られる具体性のあるオペレータ(過去の技術者が繰り返して使ってきた考え方の類型)を手がかりとして、参加者を解決策の存在する領域の方角にガイドしてゆくガイド付きブレーンストーミングを行い、効率のよいアイデア発想ができる。
PF
(Problem Formulator)
問題のメカニズムの明確化、方針決定 1994年
アイディーション・インターナショナル社
アイディエーション・ジャパン(株)
問題状況を構成する要因を、主観的な観点からみて有益・必要と考えられる要因「有益機能」と、有害・無用あるいはコストと考えられる要因「有害機能」とに分けて、これらの相互関係を図式化しながら、認識を整理する目的で使用する。
PFはI-TRIZの各種手法に共通したツールであって、適用分野ごと(発明的問題解決、不具合分析と不具合の再発防止、不具合予測と不具合の未然防止、知的財産問題、次世代商品、サービスの企画、組織・経営問題)に最適な解決指針が提示される。
1.問題状況に含まれる主要な問題点、あるいは、主要な目的に関する機能(すなわち、作用、事象、プロセス、操作、効果)を複数のボックスに記載する。
2.機能同士を原因と結果の連鎖になるように矢印(リンク)で接続して、因果関係モデルを作成する。
3.問題解決のターゲットを、有害機能の排除、有益機能の改良、矛盾の解決から選択し、問題解決指針を入手する。
4.問題解決指針に対応するオペレータ(発明のパターン)を使って、アイデアを発想する。
問題解決のコツは、問題発生のメカニズムを解明することである。I-TRIZでは、問題発生のメカニズムを目で見てわかるように因果関係モデルで表現する。
「発明的問題解決(IPS)」では、因果関係モデルから問題を解決するための指針が、問題領域の全般にわたって網羅的に提示される。そのため、問題解決する側の都合に応じて、即効的解決と根本的解決のいずれか一方または両方を選択し、検討することができる。
TOCfE
(TOC for Education)
教育のためのTOC
「ちゃんと」考えるためのツール 1995年
キャシー・スエルケン
TOCツールと、先見の明がある世界中の教育者のシナジーを考え、子どもと大人が効果的に考え、コミュニケーションが図れるようにすることにより、子どもと大人の教育を著しく改善する。 「ロジック・ブランチ」で、出来事、概念、主張間の原因とその結果を調べる(何を変えるのか?問題は何か?)。
「クラウド」で、思い込みを見つけて、「あちらを立てればこちらが立たず」の対立状況を解消する(何に変えるのか?解決策は何か?)。
「アンビシャス・ターゲット・ツリー」で、前向きで、大変望ましい目標であり、その達成には困難が伴うため、挑戦しがいがあると仮定されている目標を達成するための戦略的計画を立案する(どうやって変えるのか?どうやって変化を導入するか?)。
「TOCfE」は「TOC思考プロセス」の教育関係者版という位置づけである。
I-TRIZの簡易版として、アイディエーション・ブレーンストーミング(IBS)とプロブレム・フォーミュレーション(PF)との組み合わせがあるので、I-TRIZの導入段階に使うとよい。
目的発想法 経営、仕事、人生を目的、手段の体系と連鎖で考える 1995年(出版)
村上哲大
人が何かの行為を行うに際して、対象とする物事の機能を明らかにし、その中から最善の目的、最適の手段を選択し、それら目的・手段を体系化してゆく発想法である。 1.行動に関係する関心事等
2.取り組むテーマを決める
3.テーマに関する機能を収集する
4.テーマを目的語にして能動態で表現する
5.手段を発掘する
6.実施項目を決める
7.実行計画を立てる
8.段取りを考える
9.手順を決める
10.目的を考えて最端末行為を行う
「目的発想法」では、目的・手段を体系化していく際に、目的と手段の系統図を作成する。
I-TRIZの「発明的問題解決(IPS)」では、既に問題を抱えているシステムを対象とすることが多いため、原因と結果の因果関係モデルを作成する。
イノベーションを起こすような問題解決を行うなら、目的自体を疑うことも必要になる。そのため、目的手段モデルを使った目的展開が必要となる。
USIT
(Unified Structured Inventive Thinking)
統合的構造化発明思考法
技術開発のコンセプト生成過程に集中した技法 1995年
フォード社のシカフス
実地問題に適用して,複数のコンセプトを迅速に生成することをねらう。アルトシュラー、より一層困難な問題の解決を目指、「発明」の技法を目標にしたのとは異なる。USITでは企業の実地問題を創造的に解決するのが目標であ、必ずしも人を驚かせる発明を強調しない。
「問題定義」「問題分析」「解決策生成」の3段階から構成され、フローチャートに従って進む。システムを記述するのに, 「オブジェクト」「属性」「機能」の概念を用いる。解決策生成技法は4種のみで,、オブジェクト、属性、機能、に対応して利用される。
技術の詳細、数値、図面、仕様、コスト、納期などは、考慮の外に置く。
1.問題定義
問題を明確に定義し、最小限のオブジェクト群を選択する
2.問題分析
(1)閉世界ダイヤグラムと定性変化グラフを作る
(2)問題状況と理想状況とのスケッチを描き、粒子群に託す行動と性質を列挙する
(3)(1)、(2)につづき、時間と空間における独自性を分析する
3.解決策生成
(1)属性を操作する
(2)オブジェクトを操作する
(3)機能を操作する
(4)機能を連結する
(5)(1)~(4)によって生まれた解決策を一般化する
(6)解決策を列挙し、報告書を作成する
「USIT」は、問題解決能力を高めるために、問題分析、解決策生成段階を体系化したものの、手順が複雑なもになっている。
解決策を考える場合の考え方は複数提案されているが、具体的なヒントを含んだ知識ベースを使用することがないため、問題分野の知識に詳しい専門家向けの手法といえる。
そもそも、知識ベースをしようしないのであれば、USITよりASITの方が使い勝手が良い。
FA
(Failure Analysis)
不具合の原因究明と再発防止策の決定 1996年
アイディーション・インターナショナル社
アイディエーション・ジャパン(株)
製品や工程などの技術システムにおける不具合や他の問題の原因を明らかにし、不具合を是正する手段を検討する。 不具合分析、再発防止専用のソフトウェアとしてFA(Failure Analysis)がある。 1.問題概要
2.システムに関する情報
構造、環境、機能、既知の有害な作用
3.問題状況に関する情報
経歴、絞り込み、増幅
4.システムの図式化と仮説の立案
5.仮説の検証
6.不具合の図式化と不具合の是正
7.コンセプトのまとめ
8.結果の評価
既に起きている不具合の是正ができない理由は、不具合の発生メカニズムがわからないからである。
不具合の発生メカニズムがわかれば、不具合の発生の原因を排除する手段を考えればよい。
I-TRIZの不具合分析(FA)では、「いかにしたら不具合を起こすことができるか」と、通常とは逆の発想を行うことで、消極的になりがちな不具合対策に積極的な取り組みを可能にしている。
FP
(Failure Prediction)
潜在的不具合の解明と予防策の決定 1996年
アイディーション・インターナショナル社
アイディエーション・ジャパン(株)
既存のシステムを改善する新しい方策を導入した際に起こるかもしれない潜在的不具合を事前に予測し、発見した不具合の予防策を検討する。
不具合予測、予防専用のソフトウェアとしてFP(Failure Prediction)がある。
1.状況の概要
2.システムに関する情報
システムの構造、環境、機能
既知の有害な作用
システムの経歴
3.不具合予測のための図式化
システムの図式化、仮説の立案、シナリオ作成
4.仮説の検証
5.起こりうる不具合の是正
不具合の図式化、不具合の是正のコンセプト
6.結果の評価
将来発生するかもしれない不具合の予防をするには、不具合の発生する可能性のあるケースを網羅的に予測できなければならない。
I-TRIZの不具合予測(FP)では、「いかにしたら不具合を起こすことができるか」と、通常とは逆の発想を行うことで、消極的になりがちな不具合対策に積極的な取り組みを可能にしている。
I-TRIZの不具合予測(FP)は、FMEAで予測した不具合の予防策を考えために使用できる。ただし、FMEAの書式を整えるものではないので、FMEAの代用はできない。
TOC/CCPM
(Theory of Constraints/Critical Chain Project Management)
クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント
無理なく期間短縮を実現するプロジェクト管理 1997年
ゴールド・ラット
ゴール・コンサル・コンサルティング(株)
クリティカルチェーンと呼ばれる「プロジェクトのスケジューリング方法」とプロジェクトマネージメントと呼ばれる「プロジェクトの管理統制方法」からなる新しいプロジェクトの管理手法である。
今までの計画管理方法(PMBOKなど)と大きく違う点は、
(1)「クリティカルパス」ではなく「クリティカルチェーン」を管理する、
(2)各タスク(業務)の時間見積り方法、
(3)生産の揺らぎを吸収する3種類のバッファ、
(4)重要なリソースの管理・活用方法、
(5)プロジェクトの進捗管理方法、
(6)マネジャーの重要業務(プロジェクトの進捗状況によるアクション)である。
特に、人間が中心に進められる業務への対応策など、不確定性の高い業務をどのように、計画・管理して行くかが明確にされている。
1.プロジェクトの目的を達成するために必要なタスクを工程の後ろから逆方向に、必要条件として抽出する。
2.依存関係に着目して抽出したタスクを並べる。
3.同時期のリソースの重複をなくし、クリティカルパスを認識する。
4.クリティカルパスの安全余裕を切り取り、切り取った合計量の半分量を工程の最後に「プロジェクトバッファ」として配置する
5.クリティカルパス以外については、クリティカルパスに合流するライン毎に安全余裕を切り取り、切り取った合計量の半分量を、クリティカルパスとの合流直前に「合流バッファ」として配置する(合流する作業の遅れからクリティカルパスを守る働きがある)。
プロジェクトマネージメントとしては「PMBOK」が標準的に使用されているが、「制約条件理論(TOC)」の発想を受け継いでいる「クリティカルチェーン・マネージメント(CCPM)」の方が実践的(現場向き)である。
SSM
(Stress Strength Model)
設計開発における不具合未然防止 1997年
田村泰彦
構造化知識研究所
トラブル情報に含まれているトラブル発生メカニズムを把握し、各機器やその一般的属性と、それにおいて発生する不具合事象、不具合事象要因、その不具合事象に対する対策内容などを、再利用可能な一まとまりの構造とした因果モジュールを整理し、その因果モジュールを因果連鎖の流れに沿って階層的に表現することで故障発生メカニズムの総体を表現する。
トラブル発生メカニズムを、因果モジュール(原因⇒結果の分節単位)に分け、各因果モジュールを、定義属性、不具合モード、ストレス要因、ストレングス要因、制御属性要因という5つの観点を用いて表現する。
1.対象のアセンブリやユニットの構成アイテムやその対象属性を把握する。
2.SSMの構造化知識ベースにおいて主に定義属性に対する検索を行い、設計アイテムやその対象属性に関係する知識を収集する。
3.構造化知識ベースの検索によって、過去に当該設計アイテムで起きた不具合の知識や、異なる設計アイテムの不具合であるが共通の対象属性を有しているため水平展開された知識などを、再発防止策・設計基準などと共に得る。
4.この結果を、再発防止チェックリスト帳票に落とし込み、チェックリスト管理を進める。
「SSM」は、構造化知識ベースの検索によって、具体的な再発防止策を決定することを目的としている。そのため、I-TRIZの「不具合分析(FA)」で再発防止案を出した後の具体化段階に使用できる。
「SSM」は、不具合分析のみで、FMEAのような不具合予測は考えていない。
KW
(Knowledge Wizard)
非技術的問題の解決 1998年
アイディーション・インターナショナル社
アイディエーション・ジャパン(株)
経営者、ファシリテーター、チームリーダーや他の専門家(問題解決の初心者も含みます)のために設計された「ナレッジ・ウィザード」は、人間 が関係するシステム(たとえば、団体、企業、部署、チームなど)の問題状況を分析、解決する強力な新しいツールである。
特に、可能性のある解決ルートを幅広い視野から見つけるために、問題状況について重要な情報を収集、構造化することを手助ける。効果的な改善をまとめ、実現する、「革新の原則」の強力なセットを体系的に適用する。
1.目標の確認
(1)システムアプローチ、資源把握
2.課題のモデル化
(1)プロブレムフォーミュレーションと方針決定
3.アイデアの発想
(1)オペレータを使ったブレーンストーミング
4.方策案のまとめ
(1)アイデアの分類
(2)方策案の単純化
5.結果の評価
(1)二次的問題の解決
(2)不具合の予測と予防
(3)進化のパターン/ラインの適用
(4)実行計画の策定
技術以外の一般的な問題解決向けの「ナレッジ・データベース(KW)」であれば、最初からプロブレム・フォーミュレーション(PF)との組み込まれているので、多くの知識ベースを有する本格的な「発明的問題解決(IPS)」を採用する前のI-TRIZの導入段階に使うとよい。
ASIT
(Advanced Systematic Inventive Thinking)
先進の構造化発明思考法 1999年
ロニ・ホロウィッツ
ジェイコブ・ゴールデンバーク
ドリュー・ボイド
既存の製品を最初に、ASITの5種の思考ツールのうちの一つの線に沿って (概念的に) 変容させる。そのとき、 特定の目標を想定していない。第2段階において、 その新しい (仮想的な) 製品を可能性のあるマーケットとマッチさせる。
そのマーケットは次の質問に答えることによって同定される。「われわれの変容させた製品によって、誰が、どんな状況下で、益を受けるだろうか?」
一つの閉世界は, 「その製品を作っているオブジェクトたちのタイプと、その製品のすぐ周辺にあるオブジェクトたちのタイプとの集合」として定義される。ASITの閉世界原理は, 開発者に対して, もとの製品と同じ「世界」を共有する新製品を開発するように制約する。
閉世界条件は、開発者に、既存の製品を置き換えたり、いままで存在しなかった新しい要素を追加したりする代わりに、既存の製品のバリエーションを着想するように制約する。このようにして, ASITで生成された新しいアイデアは, 研究開発努力をまったく必要としない。
1.統合法
既存の構成要素の一つに新しい使い方を与えることによって問題を解決する。
2.乗算法
既存のオブジェクトのコピーでわずかに変容させたものを、現在のシステムに導入することにより、問題を解決する。
3.除算法
一つのオブジェクトを分割して、それらを部分として再編成することにより問題を解決する。
4.対称性の破壊の方法
対称的な状況を非対称な状況に変換することにより問題を解決する。
5.オブジェクトの除去の方法
一つのオブジェクトをシステムから除去することにより、問題を解決する。
機能を決定する前に一つの形を創ることによってアイデアを作り出すことは、心理学者のロナルド・A・フィンクらによって、「形に機能がついてくる 」思考として発表されている。一連のすばらしい実験において、ロナルド・A・フィンクらは、「機能より前に形を決定するように制約されたとき、各人は一層創造的になる」ことを示した。
「構造化発明思考法(SIT)」から派生した手法には、USITとASITがあるが、使い勝手としてはASITの方がよい。
DFSS
(Design For Six-Sigma)
新たなプロセスを確実に構築するための活動の実現 1999年
GE
活動開始時に対象とする業務プロセスが存在しない場合に、アイデアからプロセスを新たに作り出す手法。
顧客の声(VOC)や組織内にあるさまざまなアイデア、会社の戦略などから新プロセスが生み出す価値を考え、DMADV(ドマドブ)という検討ステップに従い、設計した新プロセスを試験運用して、その結果を検証する。
DMADV(ドマドブ)
1.Define(定義):プロジェクトの計画を立てる
2.Measure(測定):顧客のニーズを把握する
3.Analyze(分析):新プロセスの概要を決める
→顧客の声(VOC)から抽出した顧客にとっての重要なニーズであるCTQ(Critical to Quality)でコンセプト案を評価する
4.Design(設計):新プロセスの詳細を設計する
5.Verify(検証):設計したプロセスを検証する
シックスシグマでは、このCTQを特定するために測定や分析に膨大な時間と労力をかける。
CTQが多いということは、課題が定義されていないとされ、さらに絞込みを行い数少ない真の要因を見つけ出すことに注力する。
I-TRIZを実施して得らえた解決コンセプトを詳細設計につなげる手法として有効であるが、具体的には、「リーン製品開発方式」の方がI-TRIZとの相性が良い。
シナリオ・ライティング 描写性とストーリー性を付与した、理解しやすい技術予測手法 2000年
ハーマン・カーン
時間順序的および同時的な一連の事象を論理的に、しかも各事象のタイミングと相互関連を書き表したもの。特定の事象が将来においてどのような影響をもつようになるかを、影響を受ける要因群を整理し、それらの変化状況を物語風に描写する未来予測手法のひとつ。
オペレーション・リサーチ(OR)やシステム・アナリシス(SA)などの量的展開に、質的変化とストーリー性を加味する場合に使用される。
(1) シナリオを目的を明らかにする
①今後の環境変化の描写
②環境変化への対応策の描写
(2) シナリオのケースを明確にする
楽観的、中間的、悲観的シナリオ(通常は中間的)
(3) 主題を明確にする
①シナリオを読む対象者は誰か
②何を訴えたいか
(4) 舞台の設定
①いつ ある断面の一日、あるいは何日か
②登場人物(年齢、性、職業、・・・)
(5) 興味を持たせる工夫
トリック、ユーモアを散りばめる
定量的なオペレーション・リサーチ(OR)やシステム・アナリシス(SA)の欠点を補う、定性的な技法としてシナリオ・ライティングが作られた。
ストーリー化することで人と物、人と環境といった数量化できない要素の問題点などが発見され、作戦立案に有効だったと言われている。
いかに過去のデータの解析に優れていても、過去のデータに含まれない、時代の潮流、産業構造の変化、消費者市場の変化、供給側の変化などの要因が常に存在するため、複数のシナリオを作成することで対応せざるを得ない。
I-TRIZの「戦略世代進化(DE)」も、最終的にはコンセプトを実現した後に起きるであろう事象に対応するための「進化のシナリオ」を作成することになっている。
LSS
(Lean Six Sigma)
リーンシックスシグマ
狙いどおりの成果を早く出すための活動の実現 2001年
GE
ムダを排除して業務効率の向上を図るリーン生産方式と、作業のバラツキを制御して高品質なビジネスプロセスの確立を目指すシックスシグマを組み合わせたマネジメント手法。
活動開始時に対象とする業務プロセスが存在する場合に、DMAIC(ドマイク)という検討ステップに従い、従来の業務プロセスを改善して効果を生み出すために行う。
DMAIC(ドマイク)
1.Define(定義):取り組むテーマを決める
2.Measure(測定):現状のプロセスを把握する
3.Analyze(分析):問題の発生の原因を特定する
4.Improve(改善):チームで改善案を出してみる、改善案を選んで試す
5.Control(定着):取り組むテーマを決める、結果を見て正しく評価する
「リーンシックスシグマ」は、生産やその他の業務プロセスの改善のための手法である。
企画、開発、設計段階の改革、改善を考えるのであれば、I-TRIZの手法と「リーン製品開発方式」との組合せを採用するとよい。
DE
(Directed Evolution)
次世代商品・サービスの企画提案 2001年
アイディーション・インターナショナル社
アイディエーション・ジャパン(株)
潜在的な進化のシナリオやトレンドをまとめた「進化の可能性に関する情報バンク」や人工システムが歴史を通じて発展してきた過程に何度も繰り返して観察される強い傾向をまとめた「進化のパターン/進化のライン」を利用することで、対象として選択したシステム(製品、技術プロセスなど)を新しい世代のシステムへと進化させる企画の立案作業を支援する。
対象システムが望ましい状態で発展する姿、その過程で生じるおそれのある否定的な状況、ならびにそうした状況を回避し逆にそこから何らかの肯定的な作用を引き出す方策を示した実現可能なコンセプト群を得ることによって一つのゴールに到達します。
これまでにまとめたコンセプトを実行に移した後に、対象システムの今後の発展の過程で順次現実に発生すると考えられる進化上の事象の系列を、使うことのできる資源と、考えられる条件に基づいて予測し、出現順序に従って整理した「進化のシナリオ」を作成する。
1.プロジェクトの目的を設定する
2.システムの過去情報の収集と解析
(1)進化史上の主な事象と、それらの間の相互関係を明らかにした歴史マップを作成する
3.次の進化ステップの予測と問題抽出
(1)進化を阻害する主な力や制約を明らかにする
4.アイデア出しとコンセプト生成
(1)問題の状況を表した因果関係モデルを作成する
(2)方向付けられた進化の指針と、問題解決の指針を得て、指針に沿ったアイデアを創出する
5.進化シナリオの作成
(1)たどり着くゴール、必要な条件、現実的な方法を明らかにする
(2)必要となる資源を明らかにする
(3)進化上の問題を明らかにし、方策案を準備する
(4)必要な知的財産の保護の方策を講じる
6.行動計画の作成と実行
(1)パイロット・プロジェクトの計画
(2)システムの進化をサポートする
①計画からの逸脱の予測
②システムの進化状況の継続的モニタリング
③計画(システムの進化シナリオ)の修正
新商品・サービスの企画を提案するには、現在のところ、I-TRIZの「戦略世代進化(DE)」を使って「進化のシナリオ」を作成する方法に説得力のある手法はない。
ただし、その考慮しなければならない範囲が膨大であるため、「発明的問題解決(IPS)」のように、数カ月で結論を出すことはできない。
「戦略世代進化(DE)」の場合には、トライアルでも6カ月程度、正式には1年程度の時間を必要とするプロジェクトになる。
CIP
(Control of Intellectual Property)
知的財産の価値を制御する
特許回避と発明・特許強化、発明の評価の実施
2003年
アイディーション・インターナショナル社
アイディエーション・ジャパン(株)
特許回避、発明強化、発明評価といった観点の基に、知的財産の価値を増加させるための系統的なプロセスを提供する。
【特許回避】
特許発明の弱点を明らかにして、第三者による特許迂回の予防または自社が特許侵害にならない製品の開発を行えるようにする。
【発明強化】
発明の弱点の除去および様々な改良について発明的な解決策を見つけることで、技術パラメータの向上、コスト削減、新しい特許の獲得、新しい市場や応用分野を見つけ出す。
【発明評価】
複数の選択肢を記述した多肢選択式テーブルを利用して、発明の価値を低減するマイナス要因の検査、発明の技術的なレベルの評価、発明の進化の可能性の評価、発明の商業価値の決定を行い、必要な対策を講じるための指針を得る。
1.既存の発明(第三者または自社あるいは、特許されたものまたは特許されていないもの、のいずれのものでも可)について、発明評価を行うことで、特許回避または/または発明強化の必要性を認識する。
2.特許回避を検討する場合には、請求項の構成要素について、それらの階層的、構造的関係および原因結果の関係を視覚的に明確化した因果関係モデルを作成し、当該発明についての弱点や不具合予測して、検討すべき指針を入手したうえで、その改良案を創出する。
3.発明強化を検討する場合には、発明の構成、作用、効果について、それらの階層的、構造的関係および原因結果の関係を視覚的に明確化した因果関係モデルを作成し、当該発明についての弱点や不具合予測して、検討すべき指針を入手したうえで、その改良案を創出する。
I-TRIZの「知的財産制御(CIP)」は、知的財産分野の問題解決にTRIZを最も早く適用した手法であり、その実績を豊富に持っている。
日本では、知的財産の価値を向上させることに積極的に取り組んでいる企業が少ない。
知的財産分野の問題は、技術と法律といった相性のよくない問題を取り扱うため、発明者である研究者、技術者と知的財産担当者との情報交換がうまくいっていないケースが多い。
そこで、誰にでも理解しやすい「因果関係モデル」を関係者(経営者、営業担当も含む)間の共通のコミュニケーション・ツールとして使用することで、経営戦略を支えるための知的財産戦略の策定、実行に取り組みとよい。
パパ・ママ創造理論 システム観に基づいた創造理論(ブレークスルー思考を進化させた創造理論) 2004年
日比野省三
形や現象ではなく、その物事の「目的」を考え、「どうあるべきか」という観点から問題を解決する。創造とは異種の組合せであって、異種を統合する「軸」は「目的」である。
目的(パパ)を変えると、タイプの違う新しいアイデア(赤ちゃん)が生まれてくる。
アナロジー(ママ)の構造である「コンセプト」を移転することで新しいアイデア(赤ちゃん)が誕生する。
1.課題の設定
2.場の設定
いつ、どこ、だれ
3.目的展開
優れたパパを見付ける、目的展開し再定義、着眼
目的を決める
4.価値観
優れたパパの衣装、大金を払う価値があるか?
5.ママの衣装
異分野の優れたママを見付ける、例えば・・・のように
6.ママの構造
目的を実現できる構造は何か
7.赤ちゃんの獲得
優れたパパの価値観を達成できる赤ちゃん
8.赤ちゃんの命名
ターゲットコンセプトを決める
9.企画計画
「パパ・ママ創造理論」は「ブレークスルー思考」の簡易版という位置づけである。
I-TRIZでは、技術以外の一般的な問題解決向けの「ナレッジ・データベース(KW)」という手法があるので、I-TRIZの導入段階に使うとよい。
ハイブリダイゼーション
(Hybridization)
ハイブリッド法
様々な市場で売れる消費者向けの新製品を得るための法則と方法論 2005年
バレリー・プルシンスキー
アイディーション・インターナショナル社
アイディエーション・ジャパン(株)
発明的問題解決理論(TRIZ)と生物進化の考え方を結合して新製品開発につなげる、新しいパワフルなアプローチ(製品のハイブリッド化)である。
技術(成熟技術と若い技術)が出揃って、それぞれの長所短所がわかってくると「統合」や「ハイブリッド化」など様々に組み合わせた発明が行なわれるようになる。これは様々な技術の良いところをもっとも効果的に組み合わせようとする試みの過程である。
「統合」や「ハイブリッド化」は何度も繰り返して行なわれることがある。初めは当初の技術と技術とを組み合わせる。次にはうまくいった組合せ同士をもう一度組み合わせたり、うまくいった組合せをもう一度当初の技術のどれかと組み合わせる、といった具合である。
1.出発点となる現在のシステム(製品またはプロセス)を選び、そのシステムの主な機能(使用目的)を書き出す。
2.そのシステムの短所をリストアップし、その短所に関連している有益な特性をリストアップする。
3.主な機能がシステムと同じで、システムと長所・短所が逆になっている他のシステムを1つ選ぶ。
4.ハイブリッド化のベースとするシステムとして、当初のシステムか、上で選んだ他のシステムかのどちらかを選択する。
5.選択しなかった方のシステムが持っている長所をリストアップする。
6.当初の構想として、ベースとしたシステムのすべての長所と、他方のシステムからもらってきたい長所とをすべて備えたシステムを描く。
7.当初の構想から出発して、ベースとしたシステムのある部分を他方のシステムの良い特性をもった要素に置き換えるという観点で知恵を絞って順次改良してゆく。
「ハイブリダイゼーション」は、そもそもシステムの成熟期に発生する現象である。
「ハイブリッド法」では、二重化、多重化という組み合わせを積極的に実行するための具体的なバリエーションを明らかにしているので、既存商品・サービスの改良に有効な手法である。
I-TRIZの「「ナレッジ・データベース(KW)」と「ハイブリッド法」とを併用することで、既存商品・サービスの改良の際のスピード・アップが図れる。
リスクマネジメント 組織の価値創造の最大化 2006年(会社法の施行)
ISO31000
(Risk management - principles and guidelines)
リスクマネジメントは、経営者の責任において実施すべき経営管理業務(マネジメント)である。管理する対象は、起きてしまった事象や不祥事ではなく、これから影響を与える可能性のある「リスク」である。組織として考えるべきリスクは、組織自体や従業員に影響を与えるリスクと、組織が消費者や社会に対して与える可能性のあるリスクの両方で、どちらも管理しなければならない。
組織のリスク例
・社会的リスク(人事・組織、社会対応、法務)
・工学的リスク(製品安全、安全・環境、情報管理)
・経済的リスク(販売、金融・財務、物流、製品品質)
1.リスクマネジメント方針の表明
2.リスクの特定・リスク分析
(1)帰納的手法:イベントツリー分析等(被害事象の発生確率を算定する)
(2)演繹的手法:フォールトツリー分析等(頂上事象の発生確率を算定する)
3.リスク評価(発生確率と被害規模によって4つに分類)
4.リスクマネジメントの目標の特定
5.リスク対策の選択(低減、移転、保有、回避)
6.リスクマネジメントプログラムの策定
7.緊急時における対応手順の策定及び準備
8.リスクマネジメントのパフォーマンス評価
問題は現在の認識であるが、リスクは今後に起こり得る現象に対する認識であり、問題と同じく主観的期待と客観的事実のギャップがリスクである。リスクとは自らの目的(理想)が達成できない恐れのことである。
経営全般のリスクを回避するために使用できる定性的な手法としては、I-TRIZの「不具合予測、予防(FP)」が有効である。
サウスビーチ・
モデル
(Southbeach Model)
思考モデル記述のための汎用ソフトウエア 2008年
Howard Smith
M. Burnett
Chrysogon Young
Southbeach Solutions 社
TRIZのソフトウエア(特に Ideation International 社のソフトウエア)の原因-結果のダイアグラムの表記に触発されて、それをもっと一般的にし、いろいろな思考モデルを自由に描くことができるようにしている。
2006年はじめには P-TRIZ (Process Innovation TRIZ)という考えがたびたび記述されている。そして、(思考)モデルを表現するための記述法として「Southbeach 表記法」が2008年に作られ、ソフトツールへの実装された(TRIZホームページより)。
状況を表現するには、「箱と線」のダイアグラムを使っている。箱でものやことを表し、線(矢印)でそれらの関係を表す。赤色で有害なもの(例えば、問題)を表し、緑色で有用なもの(例えば、解決策)を表し、状況を多様な角度から表現・分析できる。そして、問題解決のために合意した行動を青色で書く(TRIZホームページより)。 Southbeach社は、同社およびユーザが作成した多数のモデル (現在250余)を、フリーの Southbeach Modeller から常時簡単に参照・利用できるようにしている。それらはライブラリとして分野分類されており、環境、財政、将来、健康、政治、イノベーションのフレームワーク、コンサルティングの方法、などがある(TRIZホームページより)。
解決指針が入手できるところも、I-TRIZと同じである。